おおらかな家

おおらか…漠然とした言葉ですが、おおらかな家をつくりたいと思っています。
開放的な家、明るい家、自由な間取り、おおらかな建築である為には、どれも必要な要素だと思います。
けれども、もっと大切なのは、そこでの生活がおおらかであること事です。

美しいが、肩肘をはって暮らさなければならない、これ見よがしの建築には興味がありません。
友人が、西伊豆の山の中に古い農家を改造した別荘を持っていました。東京に居た頃は、筍の季節、海遊びの季節、栗の季節、季節ごとに遊びに行っていました。障子を開け放って、縁側でくつろいだり、囲炉裏で魚を焼き酒を飲んだり、とてもゆったりとした週末をすごしました。農家と言っても、大きな柱梁のある本棟造りの立派なものではなく、30坪程の平屋でどちらかといえばつましい家でした。建物に圧倒されない「建物のつましさ・素朴さ」もくつろぐのには大切だったのかも知れません。

nLDKという個室の積み重ねにも興味がありません。
家族の暮らしの中で完全なプライバシーが必要な場面がどれだけあるでしょうか。家族の中での風通しの良い関係の方が大切です。子供部屋が必要なのも一時です。子供が巣立ったら納戸にしかならない部屋が幾つもあるよりは、時間の変化で間取りが変化できる工夫も必要です。

一方で、この頃の建築雑誌に多い、単純なひと続きの空間も、如何かと思います。
色々な場所が一体の空間にあっても、それぞれの拠り所となる仕掛けは必要でしょう。落ち着いたコーナーや気持ちの切り替えになる壁、見えがくれしながら連続する空間。風通しの良い空間でも、色々な生活の場面に節目をつける配慮も大切です。
建築には、開放感×落ち着き ・ 光×影 ・ 風通しの良い関係×プライバシー ・ 美しさ×親しみ ・ 繊細×大胆、等
相反する要素が数多くありバランスが肝心ですが、私は「おおらかに暮らすこと」を大切に考えています。