建築家に依頼する-2

情報誌・ファッション雑誌やTV番組でも、建築や建築家が取り上げられる機会が多くなりました。建築家に自分の家づくりを頼むのが身近になり、住宅の設計を多く手がける建築設計事務所も増えました。
数ある設計事務所のなかから、誰をパートナーに選ぶかは、大変悩むところでしょう。ラーメン屋さんでしたら、自分の気に入った店を食べ比べれば良いのですが、建築設計はその様な訳にもいきません。
建築家を選ぶ際、建築写真のオシャレな階段・斬新な色使いなど「気の利いたデザイン」に惑わされてはいけません。
設計監理料の金額があれば、高級イタリア輸入家具のソファセットとダイニングセットに飾り棚を購入できます。あるいは、内装に費用を使えば、目に見えて豪華な内装材料を使うことが出来ます。目に見える物と設計監理料を天秤にかけるのでしたら、建築家に仕事を依頼するのは意味の無いことです。ちょっとオシャレなインテリアを設計してもらうよりも、一流デザイナーの素敵な家具を手に入れる方が満足するに違いありません。
建築家の大切な仕事は、空間や場面の組み立てをすることで、それが即ち、建築計画であり建築設計です。

  • 建物のイメージを建主と共有する。あるいは、建主からイメージを引き出す。
  • 敷地と建物の関係を計画する。
  • 建物のプログラムを整理する。
  • 建物全体にわたる、秩序や方向性を導き出す。
  • 周辺環境、デザイン、使い勝手、構造、設備、その他を総合的に考え、建築にまとめ上げる。

建築設計は、これらの能力や経験が必要で、きちんと建築の組立てが出来る人に設計を依頼するべきでしょう。
おしゃれなデザインの寄せ集めでも一応の建物は出来ますが、時間を経ると、空間の骨格がきちんとしているかは歴然とします。美人(イケメン)でも、底の浅い彼女(彼)にはすぐに飽きます。建築とは長く付き合わなければなりません。
住宅の空間や場面の組み立てという、漠然として形に表れないものに対価を支払うのは理解しがたいかもしれませんが、これが建築家に仕事を依頼することで、これを理解するには多くの建築に触れる、しかも、建築写真だけでなく必ず空間を体験することです。
優れた空間を体験すれば何か感じるものがあり、何も感じないのならば、その建築に魅力が無いか、あなたの感性に合わないかのどちらかです。
海外では、建築の組立てが出来る人に「Architect」の資格を与え、「デザイナー」「エンジニア」とは区別しています。
日本では、建築士は設計も施工も一緒で「建築家」の資格はありませんが、建築設計の経験・能力・継続的学習により一定の条件を持つ人を登録する、建築家協会の登録建築家、建築士会連合会の専攻建築士、などの登録制度があります。