アクティビティー

建築設計事務所には、住宅に熱心に取り組んでいる方、店舗やインテリアデザインに関わる方、公共施設や大きな建物の仕事が多い方、ランドスケープや都市デザインに取り組む方など様々ですが、私の事務所では、機会ある毎に、色々なスケールの仕事に取り組んでいます。
規模の違いで、考えることやデザインする上で気にかけることは違いますし、建物が出来上がるまでの時間・労力やかかる金額も違います。自分の得意なテリトリーを決めて住宅ならば住宅、オフィスならばオフィス、内装ならば内装、をデザインしたり設計すれば効率的かもしれません。しかし、私が機会ある毎に様々なスケールに取り組む理由は、 空間や建物をデザインする為に一番大切にすべきことは全く同じで、「アクティビティー」=「人の活動」を包み込む事だと思っているからです。
店舗のデザインやホテルの客室等の商業空間では、美しいデザインが求められますが、そこで食事をしたり宿泊する人の「活動」を考えずに、美しいだけでは快適な場所になり得ません。住宅しかりオフィスしかり、表層や形のデザイン・機能は大切ですが、それは好みであったり、必要性に迫られてのことです。デザインや機能が変わっても変わらないのは、人の活動が刻み込まれた空間(空気)です。
私は、設計する時に、形を追うよりも先に、そこでの人の活動を描いてみることにしています。住宅を例にとれば、朝起きて、食事をして、ゴミをだして、学校や職場に出かけて、掃除をして、友達が遊びに来て、買い物に行って、皆が帰宅して、夕食の仕度をして、風呂に入って、くつろいで、寝て、これを追いかける事で住宅の骨組みをつくる事が出来ます。店舗でもホテルでもオフィスでも全く同じことです。
設計、即ち、空間(空気)の中に「アクティビティー」を刻み込むこと!
デザインする建物のスケールが違っても、「アクティビティー」を刻み込む作業は同じです。だから、私は同じ頭で、色々な規模の色々な建物を設計しています。今まで設計した一番小さな建物は猫小屋(50cm四方)、猫の活動・生活の為に設計しました。一番大きな建物は陸上競技場、競技者と観客がプレーの興奮を共有する為に考えました。大規模な集合住宅の計画に携わった事もありますが、その時に最も大切にしたのは、街路を中心とした街全体のアクティビティーでした。椅子(家具)もデザインしますが、椅子は「座る」という人の活動を受け止めるモノであるという事において、建築と変わりありません。

色々な規模・用途の建物を設計することで、定石に流されずに多様な局面を考え、アクティビティーを見つめ直す機会になり、とても良い刺激になっています。