建築家に依頼する-1

色々なホームページに、建築家に設計監理を依頼するメリットが書かれています。「デザインの自由度」「コストコントロール」「設計監理と施工の分業による品質管理」大体同じような内容です。建築家に設計監理を依頼し、工務店に建設を依頼する方法が、これらのメリットを得やすいのですが、あくまでもシステム論です。「量産住宅」「規格住宅」というハウスメーカーの建設システムにもオプションと称するある程度の自由度を用意していますし、品質管理はシステムではなく個々のモラルの問題でもあります。
私は本質的な違いを、住宅建設に「プロジェクトリーダー」が存在し、「ホスピタリティー」があるか否かの違いと考えています。

ハウスメーカーに建築を依頼した場合、企画・設計=本社設計部、施主との打ち合わせ=営業、オプションや細かな変更=営業所の設計担当、工事現場のチェック=現場監督と実に多くの人が関わります。しかし、「この建物は私が造りました」と言える一貫した責任の所在がありません。責任の所在は、会社という体制です。
他の分野では、体制やマニュアルに依存した方法や、流れ作業という分業体制が行き詰まり、より人間性を重視した考え方に転換しつつあります。「これは、私の店です。」「これは、私が組み立てました。」一貫した責任の所在が、やる気を呼び起こし、個々の人間の「良いものを」という本能と責任感を引き出すことが見直されています。
ユニクロの店長…http://www.tv-tokyo.co.jp/gaia/backnumber/preview0518.html
セル生産方式…http://www1.harenet.ne.jp/~noriaki/link71-3.html
マニュアルとは時に思考の停止を意味し、一方「良いものをつくりたい」という本能や、「人に喜んで頂けるものをつくりたい」というホスピタリティーは、思考や工夫の継続です。

建築家は、施主とのイメージの共有から始まって、デザインし、設計し、コストコントロール、現場でのチェック、工務店の現場監督との打ち合わせ、職人・専門職との打ち合わせ、建物の色決め、工事内容の変更、工事のチェック、あらゆる場面でリーダーシップを持って建物に関わります。誰しも、「私たちの為に、素晴しい家を造って下さい。」と頼まれたら、がんばらない人はいません。
「一貫して一人の人間が一戸の家づくりに携わる」それが建築家に仕事を依頼することの意味です。
施主と建築家が直接繋がること、これが本来の建築家の能力を引き出す、唯一最良の方法です。

建物を託す側の建主もより多くの労力が必要になります。クライアントとして、プロジェクトリーダーに如何に高いレベルでイメージを共有させるかが、住宅建設プロジェクトの成否を左右する一番肝心なことです。
マニュアルや体制に建物を託すのではなく、人に託すのですから、自分に合った人選が重要です。
感性・価値観を共有でき、何よりも互いに臆することなく対話できる”flat”な関係が必要です。