トンネルハウス

建築主には仕事がら多くの来客があり、この住宅には、住宅でありながらも接客スペースとしてのパブリックな機能が求められました。「コンクリートを活かした住宅を…」という要望を念頭に置きながら、コンクリートの壁をパブリックからプライベートの領域を区切る要素として扱った、コンクリート造平屋建ての建築を計画しました。

建築は、平面計画をパブリック・セミパブリック・ファミリー・プライベートの4つの領域で計画し、4本のトンネル(現場打ちボックスカルバートン)によって構成しています。

敷地は、幹線道路から少し奥まった袋小路に位置し、自動車の旋回スペースを大きく確保した前庭を設け、そこに1本目のパブリックな領域を内包するトンネルが接します。応接を兼ねた大きな玄関・応接客間として利用する和室・自家用駐車場と勝手口をパブリックの領域に計画しています。
2本目のセミパブリックなトンネルには、リビングを計画し、3本目のファミリー領域のトンネルに、ダイニング、キッチン、ウッドデッキを計画しています。住宅街に接する4本目のトンネルには、寝室・洗面・浴室・子供部屋の、最もプライベートな領域を計画しています。

南北に軸をとる各トンネルの両端には、大きな開口や連続したハイサイドライトをとり、トンネルの内部を必要に応じて、木造の間仕切壁によって仕切っています。コンクリートのトンネルを構造体としている為、木造の間仕切りは、将来必要に応じてその位置を変えることが可能で、スケルトン・インフィルの考えで、永く使われる建築を目指しています。
コンクリートの側壁には、それぞれの領域を行き来するいくつもの開口部を開けて、回遊動線で各部屋を繋ぎ、全ての部屋に色々なアクセスができます。

必要な断熱を施しながらも、コンクリート打ち放しの表情を積極的に表現し、床の木や漆喰の白壁と対比させながら、端正で落ち着いた雰囲気を大切にしました。開口部の木製方立やスチールのサッシュ枠が、コンクリートの重量感と相まって、レトロな安心感のある表情を創っています。

建設中

3月に工事を着工し、6月上旬に上部躯体のコンクリート打ちをし、コンクリートの十分な強度を確認して、型枠・サポートをはずしました。
現場に現れたボックスカルバートン構造のトンネルの連続は、住宅とは思えない、飛行機の格納庫のような不思議な空間です。

日本建築家協会優秀建築選2008入選

計画地:長野県松本市
主要用途:住宅

構造・構法:鉄筋コンクリート造
規模:平屋
敷地面積:450㎡
建築面積:180㎡
延床面積:150㎡

工程
設計期間:2006年1月~2006年11月
施工期間:2006年12月~2007年9月