松本市内・約120坪の敷地に、約40坪の住宅を2戸(2世帯住宅)計画したプロジェクトです。
奥に細長い敷地に、親世帯・子世帯それぞれ独立した住宅としての機能を持つ2戸をL字型に配置し、奥の住宅のアプローチを兼ねた中庭を囲う形で構成しています。
建物の形式としては、2世帯住宅ですが、断続的ながらも連続性を持ったインテリアとエクステリアの展開 「見えがくれしながら連続する空間」 として計画しました。
変化しつづける、家族の関係・構成を包括するべく、ワンルームでも無く、個室の連続でも無く、ついたて状に計画した何枚もの壁による、柔らかく仕切られた幾つもの場を展開しました。
この何枚もの壁によって、各々の家族の関係が、一つになるのではなく、断絶するでもなく、見えがくれしながら、緩やかな関係を持てるように計画しました。
EAST SIDE 子世帯
道路に面した棟は子世帯で、道路と中庭のレベル差を利用したスキップフロアーとしています。
1階をRCカルバートン構造の車庫とアプローチで構成し、他の部分はコストパフォーマンスに優れ居住性の柔らかな木造で計画しています。
中庭レベルのリビングからRC上部の子供部屋へとスキップしながら空間を連続させた中に、構造耐力壁となる短冊状の壁や格子壁を配し、空間が連続しながらもそれぞれの場所が区切りをもてるように意図しました。
WEST SIDE 親世帯
奥の棟は、親世帯の居住スペースと在宅オフィスです。
玄関へは中庭からアプローチし、玄関で応接・在宅オフィスと居住スペースに振り分けています。
居住スペースは、大きな吹き抜けを介して連続するひとつの空間に計画しています。
子世帯同様、中庭に面した立面は短冊状の耐力壁でデザインし、中庭を介して子世帯の建物が見えがくれします。
CENTER 共用部
2棟の間には、客間や子供の遊び場となるフリースペースと、ダイニングやリビングの延長となるガラス屋根を載せたウッドデッキのテラスがあり、この部分が2軒の住宅の共用スペースであり、同時に緩衝帯となっています。
暖房の工夫
松本の厳しい寒さの中で、大空間・大開口を持つ建物の場合、適切な暖房計画が不可欠になります。
この建物では、パネルヒーターによりペリメーターゾーンを計画的に暖房し、併せて、1階床の冷たさを解消する簡単な工夫も試みました。
窓のコールドドラフトを窓際の床に設けたグレーチングから床下へと落とし、床下の放熱機で温め1階の床下を暖房しながらパイプファンにより排気する方法を考案しました。
特別な制御や高価な設備も必要なく、簡単な方法で床下換気・24時間換気を兼ねて床下を適度に暖房することができ、十分な効果が感じられました。