スナバは、松本市・塩尻市を中心とした50万人のエリアで、事業を生み出し、育てるための コワーキング、アクセラレーター、リビングラボの「3つの機能」をもったシビック・イノベーション拠点です。企業、起業家、大学、生活者、そして行政。そのすべてを“市民”ととらえ、 持続可能性と社会的効果を両立する事業や、 新しいしくみを、ともに生み出し、ともに育てる。それが、スナバがつくるミライです。
塩尻市振興公社が施設をプロデュース、ハブ東京をはじめ世界中で新しい働き方のサポートする株式会社Hub Tokyoが運営・活用をディレクション、山田建築設計室が設計を担当し、自由な空間構成とデザインの中に、コミュニケーションを誘発する建築を目指しました。
1階 コワーキングスペース。
コワーキングスペースや新規創業支援オフィスは、採算性の良い事業では無いために、事業のコストパフォーマンスが重要になる。外壁を構成する市松状に開口部を設けた外殻を耐震・耐火性能の高いRC造とし、床を支える内部の柱梁は鉄骨造として省力化した。外壁と屋根は省エネに優れた外断熱を施して性能は確保しつつ、内部の壁はRC打ち放し、天井は設けずに鉄骨や設備ラックを露出するなど、徹底的に割りきった倉庫の様なインテリアとしている。一方で、このスケルトンの空間は、利用者がカスタマイズする事を狙っており、世界の名だたるベンチャービジネスが「ガレージファクトリー」から始まった様に、様々な人が其々の創造力で、空間と時間とコミュニケーションをゼロから作り出して欲しいと願っている。その第一歩として、コワーキングスペースの床は、カラマツ材の輪切りの板を利用者が敷き詰めるワークショップによって仕上げた。
1階 ワークコーナー エレベーター・階段の壁は、黒板塗装のメッセージウォール
床は、カラマツを30mmに輪切りにした木レンガ ワークショップで敷き詰めた
エントランスとワークコーナーを仕切るカラマツの本棚家具 視線が見え隠れする
コワーキングスペースとエレベーター・階段を仕切る杉格子の家具
1階の要の位置にキッチンを設置 コミュニケーションのスペース
ガスコンロ、ガスオーブン、大型食器洗い機、カウンターはコンクリート打ち放し
塩尻市は年間を通して降水量が少なく、冬の寒さは厳しいものの冷房に頼らなければ暮らせない期間はわずかで、自然の風が吹き抜けるおおらかな建築としたかった。コンクリートの壁、スチールの柱梁、地産材のカラマツの内壁・家具など、素材感に溢れた多用な材料の組み合わせで、ひとつ事に縛られない自由なコワーキングスペースの雰囲気を建築デザインにも表現しようとしている。その空間に、利用者相互の交流のきっかけとなる、オープンキッチン、薪ストーブ、黒板塗装で仕上げたメッセージウォール、電車に手を振るテラス、山を眺めるテラスなど、様々なコミュニケーションツールをちりばめた。建物センターの階段・EVコアの廻りを巡る回遊動線のひと続きの空間の中に、色々なシークエンスが展開する、見え隠れする空間の連続をデザインしながら、自由で束縛されない、創造的で新しい働き方がこの建築の中から生まれて欲しいと願っている。
線路に面した、電車広場
外壁のアクセントをカラマツ板で仕上げる
3階 アルプス展望ラウンジ
アルプスラウンジの外には、展望テラス
3階 インキュベーションオフィス 39㎡