松本市郊外の田園風景のなか、150坪の広々とした敷地に建つ住宅です。のびのびしたロケーションと東西に長い台形の敷地の特性にあわせ、切妻屋根が雁行しながら屋根が連なる平屋の家を計画しました。屋根の重なりが、北アルプスの峰の重なりに呼応します。
インテリアでは、高さを変えた4本の切妻屋根が空間のボリュームに変化を与えています。屋根の連なりに合わせて軸をずらした建物でテラスを囲い、リビング・ダイニング・アトリエ・子供部屋がテラスを中心に関係を持ちます。リビングやダイニングは木製の引き込み窓で全開放し、テラスと繋がります。ステンドグラス製作の為にアトリエの床はコンクリート土間で仕上げ、同じ床仕上げのテラスへと連続させています。
テラスのガラス屋根で、冬は温かい日差しが家の奥まで差込み、夏はよしずを乗せたガラス屋根が快適な半屋外空間をつくります。テラスからは、のびのびした芝生の庭が広がります。
室内の仕上げは、お施主さんの趣向・ライフスタイルに合わせて、民家を意識しつつ僅かに色粉を混ぜて色をくすませた漆喰で仕上げ、床や柱梁はこげ茶色に染色しています。食器棚やダイニングテーブル・本棚の造り付けも柱梁と同じ色で仕上げ、明るい中にも落ち着きのある内装に仕上げました。屋外仕上げは土壁風の左官材料を櫛引で仕上げ、ざらついた表情が田園風景に溶け込んでいます。
窓を開けると田んぼを渡る風が心地よいので、夏の冷房は必要なさそうです。
冬はテラスのガラス屋根から日差しが差込み、日中はとても暖かです。個室や水廻りは温水パネルヒーターを設置し、リビングやダイニングは薪ストーブで暖めています。
住宅では、外構・庭も大切な要素です。テラスから拡がる緑の芝生と、シンボルツリーのシナの木が、土壁風の外壁と調和します。建物の竣工から何年か経て、緑の成長とともに、家も豊かな表情に育ってきました。
薪ストーブ廻りのディテールを工夫し、ストーブにより暖められた耐火煉瓦の隙間から床下に空気を送り込んで、床下暖房を試みました。床が冷たくなりやすい平屋の建物ですが、僅かに床を暖めるだけで、寒さの感じ方が和らぐようです。