ファームハウス=「農家」・・・・農業を営むご両親と、若夫婦の為の、2世帯住宅です。
作業庭や納屋との連携など、農家のニーズに合わせ、広い縁側や、味噌蔵に繋がるキッチンなど、農家の生活に合わせたプランを工夫しました。
また、柱や梁をインテリアに積極的に表現し、無垢の床板や、珪藻土の壁など、自然素材を活かした木造住宅です。
若夫婦世帯では、趣味のスキーの道具の手入れなどに対応する広い土間を確保するなど、施主のライフスタイルに答えた家を考えました。
step. 4 – Oct / 2006
基本設計のまとめに入りました。建物の構成やプラン・デザインも大切ですが、同様に住宅設備も大切です。
特に、長野県は寒冷地ですので、暖房方式によって、家の構成やプランも左右されます。
今回の住宅は、お施主さんの希望で、薪ストーブを設置します。しかし、床面積50坪を超える2世帯住宅なので、家全体を薪ストーブで暖房するのは無理があります。吹き抜けを介して30坪弱の子世帯は薪ストーブで暖房し、平屋で長く横に広がる親世帯や水廻りは、温水式パネルヒーターによる暖房を計画しました。
温水式パネルヒーターは、パネルヒーターの不凍液を暖めて循環させ、パネルからの輻射熱と廻りの空気の対流によって暖房します。温風が直接体に当たらず、埃を巻上げることも無いので、喉の弱い幼児やお年寄りに優しい暖房です。床暖房も快適ですが、床の面積は間取りで決まり、床の温度も30度程度にしか上げられない為、室内に供給できる熱量は限界があります。長野県では、かなり断熱性能を上げないと床暖房だけでは熱量が足りず、補助暖房が必要になります。しかし、パネルヒーターの場合、パネルの面積と循環する温水の温度で、供給する熱量を自由に決めることが出来ます。不凍液を暖める熱源は、灯油ボイラーが一般的で、その他には、ガスボイラー、深夜電力給湯器による熱交換が選択肢でしたが、一昨年から、新たに電気ヒートポンプも選択肢に加わりました。
TVCMなどで知られるようになったエコキュート(電気ヒートポンプ給湯器)は、電気モーターによって空気を圧縮して、その圧縮熱で温水をつくる仕組みです。電気ヒーターにより温水を加熱する方法に比べると、電気ヒートポンプでは、約1/3の電気量で、同じ熱を得ることが出来ます。暖房でも、暖房用電気ヒートポンプ熱交換ユニットが市販され、灯油代を75円/Lとして比較すると、ほぼ同じ程度の電気代で暖房することが可能になりました。今までランニングコストでは圧倒的に灯油が有利でしたが、昨今、灯油代の高騰により熱源のランニングコストも様変わりしています。
設備投資金額(インシャルコスト)は、建物建設予算に直結しますが、光熱費(ランニングコスト)も同時に検討して、建物のライフサイクルコストで考えることも重要です。
暖房設備の検討(パネルヒーター熱源の比較検討資料)
建物の材料も技術の進歩により多用になりましたが、コンクリート・鉄・アルミ・木・ガラス・土・紙など、基本的な材料に大きな変化はありません。
しかし、設備機器は、技術革新により今までの考えが通用しないことが多々あります。
住宅設備機器の選択は、光熱費・生活費に直接影響するので、お施主さんの決断を優先しますが、我々もアンテナを鋭くして、先入観を持たずに新しい技術を理解・研究し、常に的確な情報を提供できるように努力しています。
step.3 – May / 2006
今回の打ち合わせの主役は、断面図です。
平面図では、その住宅での生活の様子・立ち居振る舞いを想像します。
勿論、平面図を描きながらも、立体的な空間をイメージしてはいるのですが・・・。
実際の木造架構を考えつつ、正確な断面図を起こし、空間のボリュームを厳密にスタディーします。
更に、断面パースにして空間をイメージします。
階高を低く抑えながら、豊な内部空間になるように、木造架構を工夫します。
同時に、立面も検討しながら、建具や素材を検討します。
模型では漠然としていた建物のイメージが、徐々に具現化されていきます。
step.2 – Apr / 2006
前回の打ち合わせでは、1/100のスケールの模型で、
主屋・納屋・厩(車庫)を含めた配置と母屋の構成を検討しました。
今回は、模型のスケールを1/50にアップして、建物のプランを検討しました。
お施主さんの意見を組み込んだり、練り直しながら階段や縁側の構成を変えた2つのプランを検討しています。
A案は前回の打ち合わせを踏襲し、B案は今までの問題点を解決すべく考えています。
A案
B案
模型でスタディーしたり、模型をお施主さんにお見せしてイメージを共有しながら、計画案を固めていきます。
1/50のスケール模型ですと、かなり正確に建物の室内空間をイメージすることが出来ます。
私の事務所では、模型は設計に欠かせない検討材料であり、プレゼンテーションツールです。
この段階が、建物の骨格を決める、大切な基本設計のステップです。
勿論、模型と合わせて、平面や断面のスケッチを描きながら人の動きや空間のボリュームを検討しています。
step.1 – Feb / 2006
農家の最大の特徴は、家と「外」「地面」が密接な関係を持つ事でしょうか。
農家は、住まいであると同時に作業所です。しかも、大地と結びついた仕事です。
広い敷地に、主屋・納屋・厩(車庫)が作業庭を囲み、
仕事の合間に、作業衣のまま昼食や休息を取れるように、
半屋外空間の縁側や土間が、主屋と作業庭を繋ぎます。
今回、主屋の建替え・新築の計画ですが、まずは、配置模型によって、
主屋・納屋・車庫と作業庭の関係を検討しています。